
こんにちは。フリーランス医のDr.さいとーです。
マイクロ法人は一般に、収益性の少ないながらも、節税目的で個人事業との併用で使われることが多い印象です。
収益性が少ないマイクロ法人にとって、高配当ETFの配当所得が法人収益一つとして大きな役割を持ちます。
法人の収益として有用な配当金ですが、個人と法人の税率の違いや実際の仕訳方法など、やや初見では難しいこともあります。
そこで今回は「マイクロ法人で高配当ETFに投資する方法」を解説します。
みなさんの法人経営の一助になれれば幸いです。
・マイクロ法人で高配当ETFを購入するメリット・デメリットがわかる!
・マイクロ法人でETFを購入する方法がわかる!
・マイクロ法人で高配当ETFを購入したときの仕訳がわかる!
・マイクロ法人で配当金を受け取ったときの仕訳が分かる!

マイクロ法人で高配当ETF投資するメリット
・収益である配当金と法人経費を相殺できること
・法人の不労所得になること
個人の場合、配当所得は給与所得などの、その他の所得と損益通算できません。
個人にかかる配当金の税率は、20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%)はきっちりと払う必要があります。
一方、法人の場合は、配当の収益と法人経費と相殺できるので、経費をうまく積み上げておけば、個人の配当所得の税率よりも税率を抑えられます。
また、配当所得は法人の不労所得としての役割も果たしてくれるでしょう。
マイクロ法人で高配当ETF投資するデメリット
配当収益を相殺しないと個人よりも税金が高くなる
個人の配当所得税率は前述の通り、20.315%です。
一方、法人の場合、利益が800万円以下であれば約22%、利益が800万円以上であれば約35%の税率となります。
いずれにしても法人の税率が個人の税率より高くなります。
つまり、経費で相殺しなければ、法人の税率の方が高くなってしまうことには注意しましょう。

法人を設立したばかりで、収益が出にくい法人では高配当ETFが一つの選択肢になります。
決算が黒字の場合は、個人の方が税率が低くなるので、注意しましょう!

マイクロ法人で高配当ETFに投資する 5STEP

STEP1. 法人の銀行口座と証券口座開設
STEP2. 法人に現金を貸付ける
STEP3. 法人の証券口座でETFを購入する
STEP4. 高配当ETFの購入時の仕訳行う
STEP5. 配当金受取時の仕訳をする
STEP1. 法人証券口座開設
楽天証券orSBI証券
私は楽天証券で法人の証券口座を開設しました。
楽天証券の証券口座開設は固定電話回線など面倒な手続きが不要でしたので、容易に開設できるのでおすすめです。
これからSBI証券の法人口座も開設する予定です。
STEP2. 法人に現金を貸し付ける仕訳
今回は現金10万円を役員銀行口座→法人銀行口座→法人証券口座へ移す仕訳を見ていきましょう!
法人に普通預金の資金を貸し付ける場合は現金・預金の勘定科目「普通預金」を使います。
・役員の銀行口座→法人銀行口座

法人証券口座に移す資産の科目は、その他流動資産の科目「預け金」を用います。
・法人銀行口座→法人証券口座

STEP3. 法人の証券口座で高配当ETFを購入する
法人の証券口座に入金ができたら、証券法人口座で株式を購入しましょう!
ここでは高配当ETFであるiショアーズ コア米国配当株 ETF(HDV)を30株購入した場合の画面を見ていきます。
楽天証券で米国ETFを購入した場合は
ログイン→マイページ→取引履歴→「米国株式」を選択して、期間を指定すると今年の取引が見れます。

一株あたり102.8ドル × 30株 = 3,084ドル
為替を考慮して
3,084ドル × 114.57円/ドル = 353,333円(小数点以下切り捨て)・・・①
手数料:13.87ドル × 114.57円/ドル = 1,589円 (小数点以下切り捨て)・・・②
税金:1.38ドル × 114.57円/ドル = 158円(小数点以下切り捨て)・・・・・・③
① + ② + ③ = 355,080円 となります。
STEP3. 高配当ETFを購入したときの仕訳
会計上の有価証券は4種類に分類されます。
①売買目的有価証券 ②満期保有目的有価証券 ③子会社・関連会社株式 ④その他有価証券 です。
高配当ETFは長期利殖目的の有価証券になるので「その他有価証券」に該当します。
その他有価証券の勘定科目である「投資有価証券」を使います。
先のHDV購入時の仕訳は下記になります。

支払い手数料や支払い消費税は「投資有価証券の取得」に含まれるので、別勘定にはしません。
STEP4. 配当金を受け取ったときの仕訳
米国株の配当金の仕訳方法はいくつかあるようですが、一番簡易な方法で「受取配当金勘定のみで処理する方法」を説明します。
(外国税や源泉徴収などを「租税公課」勘定として処理する方法もあるようですが、煩雑になるので省略)
今回は、SPDR®ポートフォリオS&P500®高配当株式ETF(SPYD)の受取配当金を例に仕訳していきましょう。
楽天証券のマイメニュー>保有商品一覧>外国株式>取引報告書等
と進みます。
最後に配当を受け取った日の「外国証券権利・配当案内書」の「閲覧する」を選ぶと次のような画面になります。

実際に受け取っているのは139.3ドルなので、日本円に変換する必要があります。
このときの受取配当金の計算は
国内源泉徴収税課税標準 19,763円 ー 国内源泉徴収税額 3,026円 = 16,737円
仕訳は借方 預け金、貸方が受取配当金となり、

となります。
顧問税理士さんとの質疑応答
自分ではわからないことを私の顧問税理士さんに質問しました。

受取配当金から引かれている外国税や源泉徴収税は仕訳しなくていいんでしょうか?

外国税や源泉徴収税などは法人税で調整します。
法人税がかからない場合は還付されます。

法人の有価証券は決算時に時価評価する必要はありますか?

マイクロ法人の場合は毎期の決算時に時価評価は不要です。

有価証券の時価評価はいつ必要になりますか?

有価証券を時価評価するのは売却時です。それまでは購入した金額(帳簿価額)のままです。

質問以上です。ありがとうございました!
決算時も時価評価は要らないので、自分でも仕訳ができそうです!

マイクロ法人で高配当ETFに投資する方法 まとめ
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
マイクロ法人で高配当ETFに投資ができれば、法人の不労所得になります。
比較的再現性が高い方法だと思っているので、実践していただければ幸いです。
月々の帳簿付けや税理士さんとのやりとりにおいても、マイクロ法人の経営には簿記3級の知識は必須です。
私が利用した教材はクレアールです。オンライン授業がスキマ時間の勉強に有用です。
月々の帳簿付けはMoney Forward クラウド確定申告が便利です。

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以上Dr.さいとーでした!

それではまたお会いしましょう!!
コメント
わかりやすいブログありがとうござます!
一つ質問なのですが、
『外国税や源泉徴収税などは法人税で調整します。』
と言うのは、例えばその他経費や売上と合わせた結果利益ゼロの場合は、外国税や源泉徴収税は還付されるのでしょうか?
ちくわさん
コメントありがとうございます!
これからもわかりやすいブログを心がけていきます。
質問の内容ですが、確かに、決算の利益はマイナスで、法人税の還付はありましたが、外国税や源泉徴収税の総額よりは少ない金額でした。
還付額の計算について再度税理士さんに質問してみたいと思います。
ご質問ありがとうございます。 Dr.さいとー
ちくわさん
返事が遅くなりすみません。
結果的には、ちくわさんおっしゃるとおりでした。
昨期、損益が赤字でしたが、外国税と源泉徴収税で払済の分は還付されました。
税理士さんにも確認しましたが、黒字で合った場合は法人税と相殺されるそうです。
以上になります。ご質問、ありがとうございました。 Dr.さいとー
毎度大変ためになる記事を提供してくださり、ありがとうございます。
今回の法人を用いた資産運用の記事を見て、役員借入金の使い方について疑問が浮かびご質問させていただくことにしました。
副業でまだ十分な稼ぎが得られていない場合、役員借入金を用いながら資産運用をするかと思いますが、それでも全体としては法人が赤字になる可能性があるかと思います。
その時に、役員借入金を多めに補充して赤字にしない方が良いのではないかと考えたのですが、この考え方があっているか先生のご意見を伺いたいです。
以下に具体的な数字をお示しします。
毎月10万円ずつ投資しつつ、経費が50万円/年あるとします。
この時、売上が10万円程度しかまだないのだとすると、役員借入金が必要になるかと思います。
役員借入金を資産運用分の10万円/月だけ行い、
売上(10万)+役員借入金(120万) ー 投資(120万) ー 経費(50万) = ▲40万円の赤字とすべきか、
役員借入金を赤字分含め合計で160万円出して法人としては収支を±0円にするのとどちらが良いのでしょうか。
売上と経費は純粋に計算して、株を買う分のお金だけ個人口座から法人口座へ移す方がシンプルかなと思いつつ、
赤字の繰越は10年までですが、役員借入金の返済は無期限なので実質赤字を永遠に繰り越して稼げるようになったら資金を回収することができるのではないかと考えております。
ご意見いただければ幸いです。どうぞよろしくお願い致します。
クルクルさん、わざわざコメントをいただき、ありがとうございます!
結論からいうと
①いただいた式は損益計算書と貸借対照表の勘定が入り乱れてしまって、整理しないと考えることができません。
②役員借入金の増減は赤字には関係がありません。
先に簿記の記事をお読みいただくと、内容がすんなり入ってくると思いますので貼っておきます。
https://stairway-to-fire.com/2022/08/29/%e5%8c%bb%e5%b8%ab%e3%81%8c%e7%b0%bf%e8%a8%98%ef%bc%93%e7%b4%9a%e3%82%92%e5%ad%a6%e3%82%93%e3%81%a7%e8%89%af%e3%81%8b%e3%81%a3%e3%81%9f%ef%bc%95%e3%81%a4%e3%81%ae%e7%90%86%e7%94%b1/
【①の解説】
式に出てくる勘定を整理すると、売上は「収益」、役員借入金は「負債」、投資は有価証券という「資産」、経費は「費用」の勘定です。
会計上は「収益」と「費用」は損益計算書、「資産と負債」は貸借対照表で扱います。
法人の赤字とは損益計算書で「収益」と「費用」の合算がマイナスということです。
つまり、この式は損益計算書上で
売上(10万) ー 経費(50万) = ▲40万円 (利益が-40万)となります。
実は売上や費用が現金で取引する場合、現金が+10万−50万=ー40万円という「資産」のマイナス勘定が貸借対照表上で発生しています。(難しいですね)
一方、貸借対照表上では
有価証券(120万)ー役員借入金(120万)ー現金40万 =−40万 (純資産は−40万)
このように整理されます。
【②の解説】
役員借入金を160万円にして、投資額を120万から増やさない場合の貸借対照表は
有価証券(120万)+現金(40万)ー役員借入金(160万)ー現金(40万)=−40万 (純資産は−40万)となるだけです。
ご覧の通り、損益計算書は動きませんので、法人の赤字が大きくはなりません。
以上ですが、簿記の知識がないと、理解が難しいかもしれません。
簿記3級を勉強すると上記の内容が理解しやすいですので、勉強をおすすめします!!